童話、「青虫と緑虫」

青虫のミューイはおなかが痛くなって、葉っぱの上で苦しんでいました。そこへ緑虫のテーテがやって来ました。
「テーテ、おなかが痛いよ」
 ミューイはテーテに言いました。
「ここの葉っぱを食べてごらんよ。きっと調子が良くなるよ」
 テーテはそう言って葉っぱを食べ始めました。
「僕、何も食べたくないんだ。びょうきかもしれないよ」
 ミューイはウンウンとうなりながら言いました。
「だから、葉っぱを食べなって。すききらいしたらよくならないだろう」
 テーテはそう言いながら葉っぱを食べています。ミューイは苦しくてもがいているうちに葉っぱからおちてしまいました。地面にポトリとおちてきたミューイは口から白いえきを出していることに気がついてびっくりしました。
「どうしよう。僕、こんなに口からネバネバした白いえきを出してる。もう、だめかもしれない」
 ミューイはだんだんとねむくなってくるのをかんじました。ここでねむったら鳥に食べられてしまうなと思ったミューイは口から出る白いえきを体中にかけてかくれました。青虫のミューイはいまや白い虫になってしまいました。
「もう僕きっと死んじゃうんだな。次に生まれてくるときは鳥のように大空を自由にはばたいて、何にもおびえることなくくらしたいなあ」
 ミューイは小さくつぶやくとふかいねむりについたのです。
ミューイは真っ白な大きな鳥になる夢を見ました。大きなつばさは大空のはしからはしまでとどくようでした。
よつゆがミューイのあたまにポトと落ちてきました。ミューイはその時、目を覚ましたのです。
(僕は生きてる!)
 ミューイは自分が生きていることに大喜びをして飛び上がりました。体がフワリとうきました。ミューイはその時自分が羽を持った白い虫になっていることに気がつきました。羽をフルフルといわせるとすぐにでも飛べたのです。
 ミューイはすぐさまテーテのところに飛んでいきました。
「テーテ! ねえ、僕だよ。ミューイだよ。」
「うそだい。ミューイは弱虫青虫だい。お前みたいにとんだりはねたりできるようなやつじゃない」
 テーテは葉っぱを食べながら答えました。
「羽が生えたんだよ」
 ミューイは羽をフルフルいわせながら言いました。
「ミューイは青い虫なんだ。お前みたいに白くはないよ。君、ウソはいけないよ」
「ねえ、僕は生きているんだよ。ずっとこうやって飛ぶのが夢だったんだ。僕は飛べるようになったんだよ」
 テーテはもうミューイの言葉に耳を傾けていませんでした。ただ、葉っぱを食べていたのです。
 その時です。空から太いくちばしを持ったすずめがミューイをつかまえようととんで来ました。ミューイはすぐさま葉っぱの下にとんでにげていきました。
 上からテーテのせせらわらう声が聞こえます。
「ほらみろ。ウソなんてつくからバチがあたったんだ。青虫ミューイは地べたではいずりまわって生きているとべない虫なん 」
 テーテはその時、あとからとんできたすずめに食べられてしまいました。