無力

嫌な事を忘れようとして一心不乱に走り続けたんじゃない。
僕が歩いてきた道は僕自身の意志で選んできた。
全ては納得済みであるはずだ。しかし、様々な可能性の向こうに僕が見落としてきた事があったのではないかという思いがよぎる。
毎日戦う。自由に使える時間は僅かだ。せめてその時間だけでもやるべき事をやり遂げなければ。


勝つ人生に憧れる。諦めるのは何よりも簡単だ。あらゆる言い訳を考えればいい。理由は無数にある。
勝つとは人と競争して得るものではない。それは例えば龍を見つけること。龍は特定の人にしか会わず、巡り会うこともない。
ただの運ではない。見えない人には一生見えない。見ようとしなければ見えない。探そうとしなければ見つからない。
そういった夢を不断の努力で追い続ける。それは臥龍。世界を夢見た卵。


夢は現実と対峙する。それは毎日僕を苦しめる。追い付けないほどの遠さ、猛々しさ、清らかさ、早さ、眩さ、意識は瞬く間に無理難題を押しつける。
何にも近付けない。茅の外の気分を味わう。

何を手にした?
何を成し遂げた?


まだ何も出来ちゃいない。ただ日々を生きるだけ。


がむしゃらにやってきただけ。そして何を残した?


作品を作ることだったのか。本当にすべき事は。
ただ気持ちのいいことを繰り返して来ただけではないのか。それではただの趣味ではないか。


何を残した?
何を残す?


やればやるほど自分の無力さを知る。