パレスチナ選挙結果によせて(パレスチナ子どものキャンペーンから最近の更新分抜粋)

1月25日に実施されたパレスチナの選挙では、イスラム主義政党のハマスが予想を大きく上回る得票を獲得し、過半数を確保しました。その結果、ファタハからハマスへの政権交代が予定されています。この選挙結果について、イスラエルも米国やEUなど国際社会も驚きあわてていますが、現地の状況を良く知る立場からすると、これはむしろ十分予期された結果といえるでしょう。

今回の選挙は、整然と民主的に行われたといえます。当会の現地駐在スタッフ2名も国際的な選挙監視団の一員として、投票や開票に立会いました。またEUや米国からは大勢の選挙監視員が送り込まれ、そのレポートでも選挙が整然と実施されたことが報告されています。それどころか、独裁政権が続いてきたアラブ世界で、選挙によって政権が交代することは極めて稀な事態ですから、パレスチナに民主主義が根付いていることの証といってよいでしょう。

ですから、この選挙結果はパレスチナの民意の反映として冷静に評価すべきです。特に選挙前に、イスラエル政府がハマスとの交渉の可能性さえ拒否し、米国やEUはハマスが政権に参加した場合には支援を凍結する旨を宣言したにもかかわらず、多くの有権者ハマスに投票したことを国際社会は重く受け止めなければなりません。これは過去5年間、和平が暗礁に乗り上げるなかで、イスラエルによる土地併合が一方的に進んでいる実態と、パレスチナの経済状況ばかりか社会状況までが悪化の一途をたどっていることに対して、人々が強い抗議の意志を表したと理解すべきです。


1.イスラエル政府が現実を直視して、ハマスとの対話を拒否しないことを強く求めます。もちろん、ハマスの側に対してもまた、イスラエルとの共存という現実的な立場に立つことを強く求めるものです。

2.選挙結果に対して、米国やヨーロッパなどがパレスチナ支援の停止や縮小を公言するなど非建設的な国際社会の介入が心配されていますが、日本政府が対パレスチナ支援を継続するよう強く求めます。

3.今後パレスチナ内部では、ファタハハマスの対立が激化することも大きな懸念材料です。こうしたことはパレスチナでの混乱により一層拍車をかけることになります。アッバス議長の率いるファタハが、狭い目先の利害にとらわれずに、パレスチナ人全体の利益という視点からハマスと協力して当面の混乱を乗り切ることを願います。

4.宗教的な影響力が強まることによって、外国NGOの活動が一定の制限を受けることは十分に危惧されることです。予想されるハマスを中心とした政権が、排外的になることなく国際社会の一員としての自覚を持つことを強く望みます。また他者に対して寛容で開放的なパレスチナ社会の伝統が尊重されることを望みます。


2006年2月1日
特定非営利活動法人パレスチナ子どものキャンペーン