裸で生まれた。
裸で生きたい。
大地。


裸で生まれた。
裸で生きたい。
大地。
人は何一つ持たずに生まれた。
その時、ありのままの姿だった。
いま私は大地と向き合う。
肌で感じることが多くなった。
故郷を離れて、自然の中に身を置くことになったからだ。
そこでは森羅万象の移り行く姿が分かる。
季節で変化する。
山、川、空、雲、光、闇、気温はもちろん、音、色、匂い、触感、動物、草木、果実等一切に至るまで。


それらは夢幻の感覚を私に与える。
まるで異世界に来たようにも感じる。


大地は何も変わらない姿で居続ける。気が付く人間にだけ教えようというのか?
彼は無言の教師だった。
美しく、気高く、強く、頼もしく、毅然として、大きく、ありのままで、無邪気さや繊細さをたまに見せる。
与えることを拒まず、去るもの追わず。


あなたは私に沢山のものを与えて下さった。沢山教えて下さった。



いつの日か何一つ持たずに死んでいく。
ありのままの姿で。
何一つ残さず。
潔く、ただ沢山の大切なものに感謝しながら。