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江古田ユニバース2016について報告

<江古田ユニバース2016について報告>

 江古田ユニバース代表の三田村です。江古田ユニバース2016が終わった。ディレクター目線からエコユニ2016の報告を致します。

 

 一つ目。開催形態が変化したこと。
 展示会場または展示作品に関して。これまで基本的には江古田ユニバース主体としての企画が主だったが、今年は江古田ユニバース主体のものと自主企画のものに明確に分けた。自主企画とは文字通り会場側や参加アーティストの自主性を問うような形。
 江古田ユニバース6年間やってきて、地域性をどうやって活かしていくかを考えてきた。どの地域にもそれぞれの地域的な特性や地域に関わる人・住む人の個性がある。その個性を活かしながらアートイベントを開催していくことが大事な要素になっていくのだが、これを実現させていくのは中々難しい。
 この界隈にはアーティスト的な感性を持っていたり、創造性を持っている地域の人がいて、その方達の個性や人脈をもっと活かせるのではないか。江古田ユニバース開催6年目になり、どのような雰囲気のアートイベントかを理解して下さる地域の方に自主的な企画をやって頂けるようになるとさらに地域が開かれてるのではないか・・・。そんな思いが以前からあった。
 またアーティストの選定について、会場側から色々と意見を頂くことも多く、それだったら最初から会場側が納得できるようアーティストの選定を含め自主性を高めた企画が良いのではないかと思っていた。
 今年初めたこの開催形態の変化はまだそれが良かったのかどうか結論が出ていない。次年度以降に定点観測を続けることでより明確になっていくのではないか。ただ、やって良かったと思える事例もあり、後述する。

 

 二つ目。会場について。
 開催形態の変化と付随してくる点として、会場についても述べたい。今年特に印象に残っている会場としてWild Natureについて述べたい。 Wild Natureは今年の自主企画の相談を積極的に受けた記憶がある。
 オーナーの荒木さんから「奥様の御父様・御母様の絵本の展示をしたい」との話を伺っていた。朝日新聞の特集も入り、かなり力の入った展示なりそうだと思っていた。実際に展示が始まると非常に力の入った展示だった。内容はマチダヒロシさんとマチダマリコの夫婦による絵本の展示。自分の子どもたちに読み聞かせするために絵本を手づくりしていったものだという。これまで作った絵本は80冊にもなるらしい。絵本をただ展示するのみならず、読み聞かせが出来るコーナと設けていたり、絵本作りの解説があったり、全体的に非常に丁寧に空間作りがなされている。またアーティストのマチダヒロシさんとマチダマリコの夫婦やオーナーの荒木夫婦も会場に滞在し、丁寧な解説と来客対応されていた。
 来場者数も自主企画の中でダントツのトップで、沢山の方に来て頂けるよう、宣伝活動に力を入れて頂いたことが理解できた。このような展示を拝見し、こういうものは自主企画でないと出て来なかったものだなと感じた。また、地域にゆかりのある方が展示して下さったことでこの地域性が一つ活かされた例だと言える。

 

 三つ目。会期について。
 今年は開催時期を1ヶ月ほど後ろにずらし、江古田界隈大学の学祭と同時期に開催した。それが良い結果として出たかどうかはまだ分からない。ただ、まち中でイベントが行われると通行人が増えるのでそこから立ち寄って下さったお客様が寄って下さる現象はあった。
 気温の面では一ヶ月ずらすだけでも随分と差が出て、非常に寒い時期になってしまった。スタッフからは受付の机が野外に出ているので非常に寒かった。体調が悪くなった。なんとかうまく工夫出来ないかとの声があった。それに対して「どこかの会場の入口側。室内で受付はどうか」「そもそも室内では開催しているかどうか分かりにくいから(露出度を高めるために)外に机を出すようになった経緯がある・・・」などの話が出てきた。次回開催の仮題となった。
 また学祭と日程が重なってしまったが故に学生ボランティアの数と手伝い頻度が減ってしまった。

 

 四つ目。アーティストまたは作品について。
 印象に残ったアーティストまたは作品についての話。今年は江古田ユニバース2016のロゴ制作を鈴木麻美さんにお願いした。彼女は複数のサンプルを提出して下さり、江古田ユニバースのコンセプトや雰囲気に合ったロゴを制作して下さった。鈴木さんは非常に真面目で信頼度の高いアーティストで、会期中も出来うる限り江古田に来て下さっていた。またギャラリー古藤で上映・上演されたはっぽる☆しゅてぬーる(演劇団体)と深田絵理さんの作品も印象強い。はっぽる☆しゅてぬーるの代表、鴻森久仁男君は2016年始まってすぐに私に対して「こういう場所でこういうことをやりたい是非検討をして下さい」とプッシュが強く、彼は2013年の人体連盟(演劇団体)のメンバーの客演で来て以来、2014年以後ははっぽる☆しゅてぬーる名義にて毎年江古田ユニバースに参加してくれたこともあり、そろそろきちんとした企画の場を用意してあげたという思いがこちら側にもあった。結果として、ギャラリー古藤内で深田絵理さんとのコラボレーションをしながら、演劇と映画の上映をセットしたイベントを開催し、来場者的にもほぼ全回満席に近くという内容的にも客数的にも良い結果を残した。騒音の問題があったことは次回への課題になった。
 江古田駅自転車駐車場で展示をした堀江和真さん。個展のように部屋内での作品を構成し、空間作りにも余念がなく、とても質が高く印象的であった。来場されたお客様に熱心に作品の説明をされていたのも良かった。

 

 五つ目。レジデンス企画について。
 9月1日から10月28日の約2ヶ月間、やきほギャラリーにて渡邉義郎、土居大記、百瀬晴海らがアーティストインレジデンス活動。また、土人プロダクションが10月のうちの数日間、まちの保育園にてワークショップを開催した。
 やきほギャラリーでは去年度よりも入居アーティストは減ってしまったが、一人あたりの制作スペース的には広くゆったりと取ることができ、制作環境は良かったのではないかと思う。10月2日には中間発表と交流会を実施。
 土人プロダクションは10月を中心に5回ほどまちの保育園にてワークショップを開催。その成果を自転車駐車場にて発表した。展示の際も園児と母親などが見学に来られたのが良かった。代表の安部さんが会場に居て下さると園児からすると「あの時の先生だ」と分かることもあり更によかった。

 

 六つ目。来場者数。
 今年の来場者数は約3248名だった。前年度よりも会場やイベント総数が減った影響もあり、来場者数は減ってしまった。演劇や音楽イベントの開催を多数やってる方なら分かると思うが全てのイベントが開催ごとに来場者数が増え続けていくという現象はありえない。どこかのタイミングで落ち着く瞬間が出てくる。そのような時が来ても腐らずに信念を曲げずに継続していくことが大事なのだと思う。町の性質が変わるには10年ぐらいかかると思う。そのぐらいの時間軸で関わる継続性がなによりも重要だと考えています。

 

 七つ目。その他の成果。
 江古田ユニバース2015にターナーギャラリーにて展示されていたマリスアートプロジェクトの高橋りくさんが 「2016オリンピック・パラリンピック期間中アート企画」としての展覧会(会場:リオデジャネイロのベンジャミン・コンスタン盲学校)を終えました。後日ささやかながら祝賀パーティーを開催させて戴きました。江古田ユニバースから国際的で、しかも世界が注目するオリンピック関連のような場面で活躍するアーティストが出てくることは非常に名誉なことでありました。数年前から練馬区周辺で様々なアートイベント・町おこし系のイベント等が林立してきておりますが、「地域」の中で盛り上がることのみならず、国際的・または全国区的に活躍する方が現れるという現象は非常に希有なことである。

 

 総括。
 今年のサブテーマは『TRANSIXTION STAGE 』(第六 転換期。 transitionとsixを合わせた造語)だったわけですが、まさに転換期と呼べるような一年になったと思っています。そして6年目の今年はいつにも増して試練の年でした。
 今年から運営の仕方が変化しました。江古田ユニバースも6年目になり、当初学生だったメンバーも全員が社会人になり、新規として入ってきた学生スタッフも就職活動をするようになってきました。状況は年々変化していきます。
 このような状況から2015が終わるとき、2016年の開催について心配される方もいました。「2016やらないの?」そういう声も聞きました。事実、開催を2年に一回にしたほうがよいのではという考えもありました。
 しかし、この江古田地域に文化的な土壌を作っていくという目的を考えたとき、どんな形であれ毎年何がしかの企画を継続していった方がよいと結論しました。そして今後も継続していくことを前向きにとらえ、生存していくためにどうするべきか、何をすべきかを考えてきました。毎年右肩上がりで来場者が増える、会場が増える、アーティスト増えていく。もしくは増やしていかなければならないという構想ではいつか私達自身が自重によって潰れる日が来るでしょう。
 何度も何度も基本位置に立ち戻り、当初の目的を忘れずにやっていきたいと思います。

 町おこしという観点ではまだまだ課題が多いですが、町は一人で作っていくわけではない、そこにいるすべての人で作っているのです。これまで奇跡と呼んでも差し支えないほどの沢山の出会いと共鳴がありました。
 一人一人の取り組み方(意識)、作品の質、また共鳴度によって変化していくものではないか。何かのせい、誰かのせいにする労力と時間を、自らが努力し、行動することで変えていこうとする姿。そのように姿を変えられる人が増えれば増えるほどこの町もまた姿を変えていくと思っています。一人一人がそうやって共鳴していくこと、共鳴し合っていくビジョンが今後のエコユニの目指すべきものなのかもしれません。
 感動の日々でした。自分が感動するだけではなく、この感動を共鳴させていかなければならない。
 一年の準備期間。関係者一堂の皆様に大変御世話になりました。深い感謝と愛を感じています。どうもありがとうございました。

 この文章を書き始めたのが2016年11月で、完成が翌年となってしまった。色々と内なる声と向き合い、熟孝しながら書いた。一つ一つ精査していったことが今後の光になればと思う。

(江古田ユニバース代表 三田村龍伸)