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小さな差。
ほんの少しの差。


小さなものをバカにしてはいけない。
小さなものを見下してはいけない。
小さなものの繰り返しが、積み重ねが気が付くと大きな差になっている。


日々の積み重ねがある日、巨大な差になっている。
もちろん小さなものの積み重ねは目に見えにくい。派手さはない。目立つことも賞賛されることもない。


だが、昆虫がサナギになって、成虫になる瞬間、誰がその瞬間を見ていようか?
誰も見ていない間にひっそりと、確実に、力強く変貌を遂げるのだ。


中には天使のように助走なしに突然飛び立つ者もいる。
だが、ほんの一部の例外を除いて、殆どの人が陰で努力を重ねている。
うまくいった人を見て羨んではいけない。その人はそうなるよう、努力していたはずなのだ。


周りのやっかみは雑音でしかない。
運が良かったとか、コネがあったとか、才能があったからとか言う人がいる。
大体の場合それは妬みの台詞であって事実ではない。











そして夢を見た。
それはフーズが生まれたあと覚えている、最初の記憶だった。
「さあ、こっちにおいで。何も怖くないから。」
フーズはまだ立ってあることも出来ないのに巨大な馬に乗せられた。
馬は美しく、巨大で、力強かった。
漆黒の闇を体に宿す、馬だった。
そしてまた夢を見た。
それはかつて紙飛行機少年と呼ばれた男の姿。
過去と未来、現身と空虚が重なる。
スレイプニルの背中がこんなに温かいのは幼き日に乗せられた巨大な馬に似ていたからだ。
スレイプニルの背中がこんなに安心できるのはフーズがスレイプニルを護る騎士だからだ。
フーズの頼もしさがスレイプニルに伝わり、スレイプニルはフーズに想いを返す。
物言わぬスレイプニルに今できる事は一刻も早く星の海号に辿り着く事だ。
もう、フーズの酸素は持たない。
いま、フーズは生と死の境界で、現在、過去、未来、現実と無想の混濁した意識でなお戦っている。

スレイプニルはフーズがあらゆる人々にとって重要な使命を帯びていることを感じていた。
それは彼がマントラを有しているからではなく、スレイプニルを護る騎士だからでもない。
フーズは月で生まれ変わったのだ。スレイプニルと共に。
姿形は変わらないが、確実に生まれ変わったのだ。
それは宇宙の果てを目指す晴天と同じ境地に辿り着こうとしてることなのだ。
スレイプニルは晴天に会いたかった。
セブンもダニーにも会いたかった。スレイプニルは宇宙の果てを目指す男達の後を着いて行きたくなったのだ。スレイプニルはほぼ無の可能性に賭ける男達の魂の意志を感じた。
あらゆる無謀さを乗り越える、勇気と信念を感じた。それが何よりも尊く思えた。

時は無残にも過ぎていく。フーズの魂は彼岸に近付いていた。