リバイバル2

僕は人生の落伍者になった。サッカー選手になるために過ごした中学生から高校生2年。長い時間をかけて自分を練り上げてきた。朝から晩までボールを追いかけた。
しかしそんな努力も才能という壁に阻まれた。プロ以外に認めることが出来なかった。だから辛い選択ではあったが辞める道を選んだ。


人生の厳しさを知った、16才の春。
全てを捨てた。そして美術を始めた。リバイバルはその2年後、美術ではなく、物語を書くことで始まった。
自分の中に住まう血が覚醒したのだ。僕の祖父の持っていた才能が突如開花した。
当時リバイバルも才能の開花も意識していなかった。
だが、確実に感じていた。物語を綴る事の重要性を。そこが自分のフィールドであることを。
ただ、理屈で否定していた。学校の成績が下の下の自分に文章が書けるはずはないと。


戸惑いながら物語を一つ書き切った。
深海を旅しているようだった。自分でも気がつかない部分がまだあったのかと驚いた。


物語を書くことで沢山夢を見た。小さかった自分に読み聞かせしたくて物語を書いた。
それが初めてのリバイバルであった。


自分の中に住まう幼少の自分。彼を発見したのだ。僕は沢山彼に従った。沢山話を聞いてあげた。そして彼の言葉を借りて物語を書いた。


彼の目を見て何度も、我に帰った。
幼少の自分の悲しむ事はしたくなかった。



高校を卒業してから20になる頃、夢ばかり見てはいられなかった。美大受験という現実的な壁が立ちはだかる。それ以後、時々美術におけるリバイバルが起こるようになった。
僕は受験の為の写実的なデッサンを描く一方で無邪気な絵を描くようになった。
それは大人になることを拒否するような絵だった。理屈もへったくれもない、ぐちゃぐちゃの色と線の世界だった。



一つの人生の中で何度も生まれ変わる。
何度も同じ人に会う。輪廻を感じる。魂は一人一個ではないかもしれない。
同じ色の魂を沢山見た。それはただの偶然か?必然か?
沢山の魂が悪戯ついでに人から人へ移りながらダンスをしているのではないか。
桜の舞い散るように。