展示あいさつ

 現代の絵馬展は2009年度で2度目となる。
 日本大学芸術学部美術学科彫刻コース・大学院有志によるグループ展として2008年から始まった。画廊や大学教員などのアドバイスを受けるが、基本的に学生主体で展示企画を行う。
 画廊からは「とにかく自由に」、「元気よく」などの要望をいただく。
 2008年は面白い作品が多かった。アンケートの評判も悪くはなかった。売り上げもある程度あった。だが、本当に若者らしい作品であったろうか。
傍若無人で、荒削りで、エネルギーだけはやたら有り、無知で、自意識過剰で、繊細で、傷つきやすいのに人を傷つけ、前のめりで、前後が無く、理路整然としておらず、情熱的で、悲哀するほど真っ直ぐで、脇目を振らず、やたら夢中で、無邪気で、激しく、カテゴライズすることもできない・・・。そんなめちゃくちゃなものであったろうか。
若者の若者らしさは若者にとって、無自覚のものかもしれない。無自覚ながら若いというエネルギーのみを頼りに出来上がった作品は希望を感じさせるかもしれない。

 1月は年が明け、あらゆる希望を胸に抱く月だ。今年1年に希望が湧けるよう、様々な事を願う。多くの人の希望や願いを背負っている。絵馬は本来、私たちの多くの願いや希望を託す神器である。「現代の絵馬展」と展示名をいただきながら、作品のテーマは個別ごとに決めている。
1月の最初の展示を私達がやる事の意味を考える。私達はあらゆる希望の象徴としてこの場に居合わせているのではないか。さて、若者はそれだけの希望や願いを背負えるのか。若者はそういった期待に応える事が出来るのか。
日々の忙しさにかまけて、どこか怠けはしなかったか? 自分と向き合ったか? 本当に作りたいものを作ったか? 自分が何を作りたかったのか、考えたか? 逆に、何も考えないぐらい熱中して作ったか? 夢中だったか? 手を抜かなかったか? 情熱的であったか?
 それの応えは全て作品の中に込められている。もし観覧された方が希望を感じる事なかったら、それは私たちのエネルギー不足なのだ。
心から願え!自らを賭け、駆け抜けよ!そして自由奔放であれ!


日本大学 芸術学研究科造形芸術専攻博士後期課程 2年 三田村龍伸