小説

三人の王様2

イアンは長い間待っていた。 神が与えたもう時。「その時」が来るまでイアンは人生における明確な役割がなかった。世界を当てもなくさ迷う旅人。 ダニーは予感の風を運んだ。リアは乾きを癒し、種を育てる。 ユグドシラルより受け継ぎし世界再生の種はイアン…

3人の王様1

彼の前前世は「偉大な王」だった。彼が生まれた事で世界が変わった。彼はあらゆる博愛と公平さを持って世界を治めた。 その次世、ある国の都市で孤独に生きる戦士として生まれた。 孤独が故に世界のあらゆる愛を感じて生涯を閉じた。誰にも愛される、太陽の…

「家に帰ろう」(前日の公開小説)について

なんだか書いているうちに変な話になってしまいました。 短編ものにして書こうと思ったのに書いているうちに世界観が広がって行き、これは短編じゃ終わらないぞというところで収縮を目指し何とかまとめたものです。 龍喜と哲郎の関係を掘り下げていくと本当…

家に帰ろう

山口哲郎はヨーロッパ旅行から二週間ぶりに帰って来た。いつも見る自宅も旅行から帰ってくると何だか新鮮に見えた。愛犬のラビは元気にしているだろうか。 重い荷物を抱えながら自宅の扉を開ける。 時刻は午後二時半。家族は誰も家にいない様子だった。異変…

夢の時間

夢を見ていた。父が偉そうに飲んでいて、あたりに文句を散らし、母がいさめている。私は下をうつむきながら夕食をとっている。私と父に会話らしき会話はなく、母ともろくな会話がなかった。何が不満なのか、父が母を殴っている。これから私もなぐられるとい…

雲の下の木の王子様3

◆素直 ジュリエルは転生の門の前に立ってまま、しばらく考え事をしていました。そしていつものように雲の下へ降りていく穴のところまで歩くのです。途中、広場を通り過ぎるとき、いつもの取り巻きの連中に会いました。 「今日も行くのか?」 そのうちの一人…

雲の下の木の王子様2

◆3000本の花ある時こんなことがありました。あれはスークが旅を続ける中で大きな家にたどり着いた時のことです。大きな大きな家でした。スークはきゅうけいを取りたい気持ちになって、しきちへと入っていきました。 家の門を抜けるとたくさんのかだんの…

雲の下の木の王子様1

落ちていく雨と 落ちて来る雨と僕が昔に聞いた音はいつも落ちていくほうだった 雨が雫となって生まれる瞬間がたまらなく好きなんだ 風が旅の途中で一休みをする時に出す音くらいに好きだった 水の粒が静かに触れ合って立てる音は ちょっぴり切なくて 落ちこ…

雲の上の木の王子様

○天界編 昔々、あるところに木の王様が住んでいました。木の王様は雲の上に住んでいて、地上にいる木たちをいつも見守っていました。木の王様はそうやって地上の木達の様子を見守る事が仕事だったのです。 木の王様は普通の木とは違うところがいくつかありま…

童話、「青虫と緑虫」

青虫のミューイはおなかが痛くなって、葉っぱの上で苦しんでいました。そこへ緑虫のテーテがやって来ました。 「テーテ、おなかが痛いよ」 ミューイはテーテに言いました。 「ここの葉っぱを食べてごらんよ。きっと調子が良くなるよ」 テーテはそう言って葉…